【コラム】成長し続ける木村啓太郎。こじ開けつつある成功への扉(2月3日 香川ファイブアローズ)

2018-19 B.LEAGUE2部 第20節1試合目
アースフレンズ東京Z 63-83 香川ファイブアローズ
@大田区総合体育館 2月2日(土)
(記事:上溝真司)

――――

香川ファイブアローズは2月2日、アウェー大田区総合体育館で中地区5位のアースフレンズ東京Zと対戦。前半こそビハインドを背負ったが、後半一気のスパートで逆転して差を広げ、83-63の20得点差で勝利。
連敗を18で止め、今季成績を7勝29敗とした。西地区6位は変わらない。

・・・・

かつてここまでファイブアローズでゲームにインパクトを与える日本人選手はいただろうか?
この試合では、序盤からパスにシュート、リバウンドにスティールと随所でボールに絡み、176cmのバスケットボール選手としては小さな体躯へ自然と視線がいってしまう。この日の上演、主役は間違いなく18得点6アシスト8リバウンドを挙げた木村啓太郎。
木村は過去、「高松」時代から含めてどの選手とも明らかに違う。

 

単に今まで以上に「点が取れるガード」という意味でではない。
最大の魅力は、その成長力。
昨季は衛藤HCに「彼は2番(シューティングガード)の選手。1番(ポイントガード)の適性はたりていない。」と評価されていた。ただ本人からの弁によると「ちっちゃい選手はガードやってないとカッコ悪い」だそう。
筆者の見立てでも、「使われる選手の一人」。ファイブアローズにやってくる選手の多くがそうであるように、光ってほしい長所以上に足りないものが多い選手だった。
フィジカルが足りない、思い切ったパスがだせない、外国籍選手と「バスケット」ができない、判断が遅い、沈んだら切り替えができないなどなど。

それが、変わった。いや、変わっていく。
今季、最初のインタビュー時点で違った。まず躰の厚みが違う。「あれ?木村ってこんなに肩盛り上がってたっけ?」オフシーズンが明けて一番に思ったのは発することばよりもその躰に対する違和感だった。
その違和感には開幕戦ですぐに答え合わせができた。当たって、負けない。外国籍選手がゴール下へ待ち構えていても、逃げずに突っ込む。そしてクリーンにシュートに行こうとせず、躰の当てるポイントをずらせてファウルを貰う。なんなら同じくらいの身長の選手なら勢いで跳ね飛ばす。

パスのスピードはシーズン当初からみても飛躍的に上がった。今の木村のパスは「垂れない」。最高で12アシストを記録した今季は優しいパスなどいらない、とでも主張するように目標へ一直線に飛ぶ。速いパスは相手ディフェンスの対応を間に合わなくさせる。

外国籍選手とのかかわりも変わってきた。みんなで集まって「さあ会議」ではなく、木村が実績のあるレジーを、ウッドベリーを呼びつけてこうしたい、というだけでも過去なかなか見られなかったが、それだけじゃなく。
内容は聞こえないが最近の仕草は「OK、わかった、そこへパスをだしてやる。」とでも言っているかのよう。「バスケット」をしている感がにじみ出てきた。

そして、この日は判断力が変化したところも見せた。
木村が決定的なアシストを出したりした最初の数プレーが終わって、東京Zは明らかに木村つぶしを始めた。するとどうだろう。今度はダブルチームが完成しそうになるのをあざ笑うかのような、がら空きのペリメーターへクリアパスを出して見せる。レジーとのピック&ロールを嫌がっているのを見るや、執拗にパターンを変えて仕掛ける。まさにガードの仕事。
ついには東京Zが根負けして作戦としての木村つぶしを放棄するまで。試合が決まったのは「その瞬間」だった。

これが18回負けたあとの1勝であることが示すとおり、未だチームを勝たせることができる選手とはいえない。速いがゆえに雑なパスはすぐにターンオーバーとなるし、狙いすぎのディフェンスが形を崩す場面もある。テンションの上がり下がりが判りやすく、プレーに影響がでているのもガードとしてはあまりいい傾向ではない。

ただ、「士(し)別れて三日なれば刮目(かつもく)して相待すべし。(男子3日会わざれば刮目してみよ)」とは三国志の言葉。
木村は足りないものを何とかしてかき集めて、変わり続けることができる稀有(けう)な選手だ。

「精度は低いが1つ1つトライできていると思う。僕はシーズン中にどんどん成長していかないと、個人としてこの先来年なんてないと思うのでビビらずどんどんトライして行きたい。(2018年11月コメント取りより)」
まだまだ危機感を持たねばならないワン・オブ・ゼムだが成長がいずれ、その立ちはだかる重い扉をこじ開け、信州の石川海斗、熊本の古野といったB2トップガードや、はたまたB1の選手に比肩するような日が来たとしても、決して信じられないほどの驚きではないと考えている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です