【インタビュー】―変化を与えなければチームは変わらない― もっとも苦しい時代を支えてきたK2Oの想い~後篇(7月14日 香川ファイブアローズ)

インタビュー

(インタビュー前篇はこちら→鈴木正晃インタビュー前篇
前篇に続いて、プレーオフ出場、苦しかった2015-16シーズン、そしてプロ選手とは?これからについて、K2Oのインタビュー後篇をお読みください。
※このインタビューは引退発表前に行ったものです。
-----------------
今季こそは・・・との誓いを胸に臨んだ2014-2015シーズン。チームは実績を持つ日本人PG・藪内幸樹を獲得。

「藪内さんは自分の考えというか思考がしっかりありました。だから僕はすごく好きだった。プロ選手としての自己ブランディングや、プロとしての立ち居振る舞いとか。そういう選手は需要もあると思う。そういった点でも僕は欠けている部分があるから今の状況なんだなと感じています」

その藪内の活躍もありファイブアローズは6季ぶりにプレイオフ進出を果たす。

「あの年はプレイオフに行けるチームがそれまでの6チームから8チームに増えたから(プレイオフに)出られなかったら悲しいくらい。けど嬉しかったですよ、今までにない経験だったので。プレイオフは良い緊張感がありました。(プレイオフ1stラウンド対戦相手の)京都の盛り上がりも凄くて羨ましいなとも思いました。高松もいつかそうなればいいなと」

プレイオフに進出したものの京都ハンナリーズを相手に2連敗し1stラウンド敗退となったファイブアローズ。翌2015-2016シーズンは、これまで4年間チームを指揮してきた前田顕蔵HCがチームを離れることになった

「一番影響を受けたHCが顕蔵さん。体育館以外の場所でも顕蔵さんはほとんどの時間をバスケのために費やしていた。その顕蔵さんの努力に僕たちが絶対応えなきゃいけないと感じていました。顕蔵さんは秋田(ノーザンハピネッツ)のコーチとして呼ばれましたが、それは顕蔵さんにとって凄く良いこと。やっぱり、良いコーチ・良い選手は上位のチームに求められるんだと再確認。もちろん寂しい気持ちもありましたけど、自分もそういう風にならなきゃなぁとプラスに思いました。正直、もっと一緒にやりたかったとも思いましたけど。」

新たに迎えた伊藤伸由コーチのもと浜松・東三河フェニックスとの開幕戦に勝利したファイブアローズ。開幕5試合で4勝1敗という好スタートを切るが、その後7連敗。1勝を挟んで再び7連敗と低迷する。

「チームっていうのはシーズンを通じて、どんどん良くなって完成していくものなんですよ。けど、それが出来なかった結果がこれなんでしょうね」
05

良くならなかった理由とは?

(しばらく悩んで)「個々の力・スキルのなさだったり、色々と悪いことも重なって選手のモチベーションも薄れていったのかなと思います。実はシーズン前の練習の時から『やばいな』というのは感じていた。シーズンをアジャストしていけない、崩れると思っていました。それは、チームとしてのバスケットボールではなかったから。僕たちと実力が同じようなチームには勝つことが出来たとしても、強いチーム・ビッグネームにはシーズンを通して勝つことが出来ないなと」

伊藤コーチは、その場の状況で選手自身にプレイを判断させるという方針だった。これまでチームディフェンスを軸としていたファイブアローズ。やはり、戸惑いがあったのだろう。

「シーズンを通してルールがないままだと良い方向にはいかない、厳しいなと思っていた。

全てルールで縛るのはよくないけど、最低限のルールは必要だったと思う。そういう事もあってシーズン前から不安だった。選手間でも、それは感じていました」

ファイブアローズは成績低迷を理由にシーズン途中の12月26日、津田洋道監督をHC、伊藤コーチをACとする新体制に変わった。しかし結果は出ない。なぜ修復は出来なかったのだろうか?

「修復というか、強くなるためにいろいろ取り組みましたけど結果にはつながらなかった。練習から全力でしっかりやっていたけど結果はついてこなかった。何をすれば勝てるのかが分からなかった。少しでも勝てていたシーズンは勝ちパターンっていうのがあったんですが、そんな感覚もなくて。津田HCになってルールは出来たけど間に合わなかった。今までの流れを変えるのは、やっていたことの倍の時間がかかってしまう」

チームはさらにテコ入れを図るべく、過去にファイブアローズでのプレイ経験もある庄司和弘氏をACに迎える。

「庄司ACがきて練習の雰囲気もより緊張感のある空気に変わった。けど、やっぱり勝てない。もっと出来るはずだと思ってバスケをやってますし、出来ると思いながら練習もしている。けど、それが本当に出来なかった年だったなぁって。(原因は)メンタルもあるし、どうやっても出来ないことってあるのかなぁっていう風に思った。途中まで勝っていても4Qで追いつかれるっていう不安もありました。気持ち的に苦しかったですね、いろんなことがある中、それでも強くならなきゃいけない、それが一流。僕には、その力がなかった。けど、苦しかったのも今思えばいい経験になったと思います」

そしてシーズンは終了。11勝41敗、西地区12チーム中11位という結果に終わり鈴木はファイブアローズを退団することになった。

「来季の契約はないという話があった時、正直残念だった。Bリーグでやってみたいとかじゃなくファイブアローズでやりたいというか・・・。プロの世界は必要とされなければ去るのは当たり前だと思っているけど、やっぱり残念でしたね、今まで6年間やってきたチームだし。けど、チームが変わるためには絶対に必要なこと。変化を与えなければチームは変わらない。それはチームにとって当たり前の行動だと僕は思うし心の準備は出来ていました。僕一人だったら(バスケを続けても)いいけど家族もいるし、次で30歳になるのでこれがいい節目なのかなと。

自分のキャリアを終えるのが今なのか5年後なのか大きな差があると思うんです。僕は今まで一般社会を経験したことがない人間だし。だから、ちょうどいい節目でもあるのかなと今は考えてますね。バスケを続けるか、一般の職業に就くのかっていうのを考えてます」

奥様とはどんな話を?

「僕は最後、ケガしちゃったから中途半端じゃないですけど『良い終わり方ではなかったよね、だったらもう1年くらいやってもらいたかったな』って言ってました。僕より納得してないっていうか、出来るんだったらやって欲しいって。けど、僕がね、家族がいるからやっぱり色々考えちゃいますよね。それにバスケを出来る環境はどこにでもあるからバスケは続けられる。やっぱり僕、バスケットが好きなんです」

バスケットボールが好き。鈴木のそんな一途な思いをブースターは感じていたからこそ鈴木を応援し続けたのだろう。今、ブースターに対する思いは・・・。

「この成績で、ここまで応援してもらえたこと、本当に感謝しています。その恩返しをどこかで出来たらなと思っています。もっといいものを見せたかった、たくさんの人に見てもらいたかったっていう気持ちもやっぱりありますが・・・。毎年、そういうモチベーションでやっていたので、それが出来なくなったのは残念だけど最後まで応援してくれたことは本当に嬉しいです。香川のブースターの皆さんは温かい。それがファイブアローズの良さであり強みなんだろうと思います」

では、チームに対する思いは?

「僕が言えるような立場じゃないけど、絶対、続けていかなきゃいけないし、強いクラブになってくれると思っています。そういう姿を見たいです。もちろん応援しますよ、ずっと。いろいろあったけど、僕はやっぱりいいチームだと思っています」

悔しい思いもしただろう、自分の中で様々な葛藤もあっただろう。それでも鈴木は“いいきっかけを与えてくれた”と、ファイブアローズをずっと応援すると笑顔を見せた。

鈴木がこれからどんな道に進むのか今は分からない。けれど、こんなに強さと優しさを持った鈴木なら、どんな道を選ぼうとも大丈夫。そして私たちは彼をずっと応援していく。そして私たちは忘れない、彼らがいたからこそ今のファイブアローズがあるということを。チームにも忘れないで欲しい。これまでファイブアローズでプレイしてきた選手たちの思いを。そして、彼らが誇れるチームとなってくれることを心から願いたい。第二幕“香川ファイブアローズ”としての幕開けに期待を込めてー。

13509383_1091734597585803_555826706_o

いつもお世話になっている、「サンタズダイナー」のマスターと記念撮影。

(記事:中条さくら)

協力:
サンタズダイナー(ハンバーガーショップ)
所在地: 〒761-0113 香川県高松市屋島西町2506−17
電話: 087-816-0889

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です