【インタビュー】トライアウトリーグ合格を勝ち取った最年長と最年少の2人、それぞれの”その先”にあるもの。(11月13日 香川オリーブガイナーズ)

11月4日から10日にかけ、香川県内の球場を舞台に四国アイランドリーグplusトライアウトリーグが開催され、10名の選手が独立リーグの門をたたき、5名の選手がその加入権を勝ち取った。

その中でも香川オリーブガイナーズは地元香川県出身の高校生選手2名に合格を出した。
湊 亮将(みなとあきのぶ)選手は甲子園常連となりつつある、英明高校出身の内野手。Jr時代に「カル・リプケン12歳以下世界少年野球大会」の日本代表となった経験もある。香川の有力校である英明から、しかも間をおかずに直接入ることになったとしたら、今後選手供給の新しいトレンドを生むことになるかもしれない。
坂出高校出身の西梶友理(にしかじゆうり)選手はいわゆる大学を目指す学生が通う”普通の高校”坂出高校の野球部に所属しながらプロ志望届を出し、注目を浴びた投手だ。
共に香川の高校生、特にNPBを目指す選手たちにとっての先駆者となれるか、期待が集まる。

中日から育成指名を受けた吉田 嵩(徳島IS)は、昨年のトライアウトリーグ出身。また、今年は海外トライアウトとの日程の都合で外国人選手の参加はなかったが、四国IL入りしている有力外国人選手もこのトライアウトリーグで見いだされており、選手の有力なエントリー元として一定の成果を出してきてもいる。

4SPOでは合格した選手の中で、最年少湊選手、最年長39歳でトライアウトを受け、愛媛から合格を勝ち取った杉浦 そうすけ選手にインタビューを行った。

NPBへの最短距離、独立リーグ経由NPBへ。純香川産のティーンネージャーの挑戦。
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インタビューをしますよ、と声をかけると「俺に?」と不思議そうに、そして緊張した面持ちでやってきた湊選手の口からはNPBへのあこがれのことばが口をついて出てくる。
野球を始めたのは4歳からで、6年にはカル・リプケン12歳以下世界少年野球大会に選抜され、世界のJR世代との対戦を経験。
高校では一度は岡山関西高校へ進みながら、英明高校へと帰香。英明高校では今年春の選抜にサードで出場した。
四国ILという場を選んだ理由をきくと、「大学を卒業したり幅広い(球歴の)人たちがみんなNPBを目指して野球をしている場所。レベルの高い野球に触れてレベルアップしたい。」とNPBへの距離感がここを選んだ理由の様子。
実際、アイランドリーガーと共に練習してみて「高校野球とは違って、打球の速さとか、判断の速さとかレベルが高い。今まで自分がしてきたより全然レベルが高くて自分も早くこのレベルの選手になりたいと目標ができたし、1日でも早く追いつけるようになりたいと思って野球に取り組みました。」と、手ごたえを感じる一方で「自分は守備がまだ全然で、打球判断も送球もまだまだ遅いので、バッターが打つ瞬間に反応できるようになりたいです。打撃の面では体が突っ込んでしまうので、ポイントを作れという風に言われていて、すぐにはできなかったんですけれど、そういうところが治らないと通用しないというのが指導を受けて分かった。」と西田監督や、智勝コーチといった指導陣からも厳しく欠点を指摘された。
打撃成績は6試合に出場し、23打数6安打の.261とトライアウト生の中で圧倒的というほどの成績は残せず、エラーも2つ記録した。

それでも、物心がついた時からあこがれのNPBへの距離感がつかめたことについて「プロ野球という目標に1日1日積み上げていくしかない。」と最後には凛々しい貌を見せてくれた。
当然、高校卒業後では独立リーグ経由がNPBへの最短距離であることは理解している。向上心を持ち続けられれば、夢への扉までたどり着ける。そう信じる湊選手の姿は来年の飛躍を予感させてくれる。

湊 亮将(みなと・あきのぶ)
1997年4月25日生 166センチ81キロ
一塁手/三塁手 右投右打
英明高校 来春卒業予定

お笑い経由独立リーガー。好きな野球でプロへと挑む、杉浦39歳の夢舞台。
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グラウンドを見渡せど、お笑いの空気感はまるでない。いい意味でオーラがない。グラウンドの中に「野球が好き」というくくりで20台前半以下の選手たちに異物感なく溶け込んでいる。愛媛マンダリンパイレーツからトライアウト合格を勝ち取った、39歳の杉浦そうすけという”選手”はそういう存在だった。
マイナーなガイジン助っ人の個性的なバッティングフォームや癖を真似る芸を中心にテレビへ出たり、コントで舞台に立つ。山内崇と「360°モンキーズ」のコンビを結成して芸歴18年。なんと湊選手が生まれた年に結成され、長い間多くの人々を笑わせてきた。
東京都八丈島出身、高校は当時エース三澤を擁して春の高校野球で優勝した強い帝京高校で三澤の1年後輩。高校のとき野球漬けの生活へのつらさから一度は背を向けた野球に今再び真剣に取り組みたいと、四国ILトライアウトリーグへ参加を決めた。

湊選手やそのほかの選手たちがNPBへの修業の場であくまで経由地なのに対し、杉浦選手は「独立リーグというプロへの入り口が広がったというのがあって、動けるうちに人生悔いなくやりたいと思って。自分の力がどこまで通用するのか挑戦することに合否より自分で動いくことに意味があって、プロ野球を肌で感じてね。」と”独立リーグというプロ野球”で野球選手をしたいという。

「過去を振り返ってもしょうがない。若かったときはもっとできたかもしれない、もっといい球を投げることができたかもしれない。でも、その時に戻ることはできないんで、今この年でできることをためしたいんです。」と野球に取り組む姿勢は真剣そのもの、かつ、「みんな野球が好きでやっているのが確認できたし、野球を通じて(独立リーガーやトライアウト生の)皆と会えて楽しい。」と心から楽しんでもいる。
球速こそ全盛期は140キロ台だったというところからは見る影もないが、5イニングを投げて1失点の防御率1.80とトライアウト生の中でベスト。体力は落ちたとはいうが体力テストでも他のトライアウト生とそん色ないところを見せた。

「周りはどういおうと気にしない。自分がずっと野球をやってきてプロの選手を尊敬して、あこがれてやってきたので。ずっとピッチャーとして野球をやってきたので(芸でなく)ピッチングで見てもらいたいし、自分で悔いなくやってよかったと思える人生でありたいと思いますので。」と夢舞台への思いを語ってくれた。
愛媛から合格を貰い芸人、プロ野球選手の両立について水を向けると。

「相方(や事務所)と相談して、来れるモノなら来たいです。」とのこと。

来年の4月、野球が好きすぎて、投げることがうれしすぎてニヤケ顔でマウンドに上がる杉浦”選手”、試合の合間に客席に向かって爆笑ネタを披露する”芸人”杉浦。両方を是非とも見たいと思う。

杉浦 双亮(すぎうら・そうすけ)
1976年2月8日生 174センチ/73キロ
投手 右投両打
帝京高校 卒業、太田プロダクション所属タレント

(記事:上溝 真司)

 

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