【ニュース】又吉亮文は「克樹」の届かなかった場所を目指す。2018四国ILチャンピオンシップ、ガイナーズ劇的サヨナラで2連勝！(9月24日　香川オリーブガイナーズ)

四国アイランドリーグplusチャンピオンシップ　第2戦
香川オリーブガイナーズ　3×－2　愛媛マンダリンパイレーツ
＠レクザムスタジアム　9月23日（日）
（記事・写真：上溝　真司）
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(TOP写真：8回表、ぺレスから三振を奪う1球。愛媛側のカメラマン席、客席からは声にならない呻きが届いた。)

9月23日に行われた2018四国アイランドリーグplusチャンピオンシップ第2戦は投手戦も香川オリーブガイナーズが最終盤に追い上げ9回裏、妹尾のサヨナラヒットで逆転勝利。
2勝0敗で実に2012年以来となる6回目の総合優勝へ王手をかけて来週29日から始まる愛媛ラウンド3連戦へ向かう。

打のヒーローはもちろん9回裏1死満塁という”おいしい”場面が回ってきて、決めて見せた”持ってる男”妹尾だ。

しかし、この試合結果へと導いた選手はだれか？の問いには、「歴代もっとも有名なガイナーズ戦士の弟」又吉亮文(またよし　あきふみ)を挙げる。
彼は、2013年ドラフト2位でガイナーズから中日入りした又吉克樹、の弟。
右投げのサイドハンドというフォーム、環太平洋大学から香川オリーブガイナーズという軌跡も同じ亮文にはどうしても「の弟」の肩書がついて回るが、この日の投球は亮文だけのものだ。
7回表2死までこぎつけた先発の秀伍が、タイムリーを献上して0-2愛媛リードとなると、ガイナーズベンチは替えて亮文をマウンドへ送る。その時、脇を通りすぎながらではあったのだが筆者の聞き間違いでなければ、ブルペンでは天野コーチが「(2番手あとの打者)ぺレスから行くぞ」と準備を始めていた投手へ伝えていた。つまり亮文はワンポイント投入のはずだった。
亮文はマウンドへ上がるや、愛媛4番のヘイドーンを4球で三振に切って取って愛媛へと揺れていた天秤を止める。
続く8回もマウンドへ上がり、気が付けば普段は140キロ前後のストレートは146キロを連発。バットはボールが過ぎ去ってからスイングされるありありさまで、全く危なげなくそこで交代のはずだったぺレスからも三振を奪った。
形容しがたい形相と落ち着きからあふれる気迫、というよりこの世ならざる鬼に迫るという意味で鬼迫のピッチング。何かが宿ったかのような投球はガイナーズ打線を呼び起こし、さらには愛媛へプレッシャーを与え、8回裏にはエラーがらみで得点。「(9回追いつくことができて)延長になれば原田を考えていた」と試合後西田監督は語ったように、亮文にゆだねられた天秤は9回表わずか8球でアウト3つ、内一つが三振という恐るべき内容で大きくガイナーズ側へと傾く。
愛媛リリーフエース河津は魅入られたかのようにヒットを浴び、強張る内野陣はバント、ゴロ処理を立て続けに誤った。同点打と1死満塁で打者妹尾という状況はこうして生まれた。

登板がなかった6日で肩が休まったか？の問いには、「そんな風ではない。」、ブルペンが良かったか？の問いには「すごく悪かった。いつもは少ない球数で準備するんですが、納得いかなくて。今日は50球くらい投げました。」と好投の要素が聞き出せない。
困って率直に、良かった理由は？と問うた返しには、「今日は投球を全く覚えていないです。」と答えた。「(マウンドでは)頭が真っ白でキャッチャーしか見えていません。バッターは誰だとか全然気にならなかったんで。どう投げていたかとか説明できないし、相手が空振りしても「ああ空振りしたな」くらい。」とも。
この日レクザムBP丸亀にかけつけた1,422人の観客と関係者は、とある野球選手が”ZONE”へ入るという貴重な瞬間に立ち会えた。あらゆるスポーツのだいご味はこういう凄みに立ち会えることにもある。コメントを取る栄誉に与れた筆者には確かな多幸感がある。

惜しい、とも思う。これが2か月早く訪れ、持続できていたならば一躍ドラフト候補となっていたにちがいない。ただ、「の弟」の評価にたゆまず地道に研鑽(けんさん)を積み、今やっと開花のきっかけをつかんだ。監督、コーチを驚かせもした。

「任せてもらえるのであれば、その場所で地に足をつけて1回1回結果を出していくだけ。」という又吉亮文は覚醒の予感とともに、兄克樹が届かなかった四国アイランドリーグplus総合優勝、独立リーグ日本一へと邁進する。

(9回裏、妹尾は打った瞬間にガッツポーズ。飛び跳ねるバネも絶品で本当に絵になる選手だ。)

 香川ＯＧVS愛媛MP 　2018年度四国ILplusチャンピオンシップ　2回戦　香川　2勝

勝投手：又吉(香川OG)　１勝
負投手：河津(愛媛ＭＰ)　１敗